親父はほとんど寝たきりなので、小便の世話をした。
新聞買ってこい、とかいろいろ用事を親父はわたしに頼む。
突然ナースコールをしたので、なにかと思ったら、腹が痛いという。
看護婦が応急措置をしようかといったら「そんなのではなくて根本的に診てもらわないと困る」といいだした。
それで担当医が来たが、なんのことはない、下剤の飲みすぎで腸が動きすぎているだけだった。
担当医が、そのとき退院後の準備をそろそろといった。
いまの法律では3ヶ月以上入院できないからだ。
それで病院のケースワーカーがやってきた。
いろいろと話していると親父が費用のことを言い出した。
ケースワーカーが12万円ぐらいはかかりますといったら、親父が愚痴をたれはじめた。
そしてケースワーカーが帰ったあと、わたしにいった。
「おれ一人だけなら大丈夫なんだぞ。でもおまえたちの生活があるべや」
わたしはカチンときた。親父の意識では、わたしと母はただの余計者らしい。
たしかにわたしは自立できていないから、余計者ではある。
しかしわたしがいないほうが、親父にはいいというふうにも受け取れた。
以前は「お前なんて寄生虫だ」とののしられたこともある。
そんなに邪魔ならいなくなってしまおうかと本気で思った。
なんにも持たないで、どこかへ行ってしまうのである。
1週間ぐらい飲み食いしなければ、のたれじぬだろう。
どうせわたしもこれ以上生きていても仕方がないと思うし。
明日は地元の夏祭りのイベントでアトラクションを依頼されている。
それが終わったら、どこかへ行ってしまおうと考えた。
ところが知り合いから電話がかかってきて、頼みごとをされた。
そういうこともあるかと、やや思いとどまった。
こんなわたしでも頼りにされることもあるのだった。
まだのたれじぬのは早いようだ。
しかしいまの気分は最悪ではある。